2011年11月30日水曜日

暗夜小路 上野〜浅草アンダーグラウンド・クルーズ  好評開催中!

恵比寿のアートブックショップNADiffの地下にある小さなギャラリーで開く写真展『暗夜小路 上野〜浅草アンダーグラウンド・クルーズ 』、おかげさまで好評開催中です。今週土曜日には浅草のオフィシャル・カメラマンと言うべき鬼海弘雄さんとのトークもあります。ものすごく濃い浅草裏話が聞けると思うので、ぜひおいでください!



《トーク・イベント》
12月3日[土] 18:00〜20:00
鬼海弘雄(写真家)×都築響一

12月22日[木] 18:00?20:00
戌井昭人(劇作家・鉄割アルバトロスケット主宰)×都築響一
(両日とも入場無料、予約不要ですが席数にかぎりがあるので、早めにお越しください!)

鬼海弘雄は浅草のオフィシャル・フォトグラファーだ。渡辺克己が新宿のオフィシャル・フォトグラファーであったように。
 1945(昭和20)年、山形県寒河江市に生まれた鬼海弘雄は1973(昭和48)年から、もう38年間も浅草を撮ってきた。1941(昭和16)年、岩手県盛岡市に生まれた同じ東北人の渡辺克己が、新宿を題材にした作品を初めて発表したのも1973年。ふたりともモノクロームのポートレイトにこだわりつづけ、ふたりとも青年時代のインドへの旅が、写真家として自立するための契機となり……そして渡辺克己は2006(平成18)年に亡くなり、鬼海弘雄はまだ浅草を撮り続けている。
 新宿と浅草という、東京のふたつの極を同時代に歩いた、東北生まれのふたりの写真家。でもふたりの共通点の多さと同じくらい、写真集から立ち現れるふたりの眼差しの違いもまた大きい。「風俗」にこだわりつつ、そこから透けてくる人間性をつかもうとした渡辺克己と、「風俗」を超えて存在する人間性をまっすぐにつかもうとする鬼海弘雄。それはもしかしたら、そのまま新宿と浅草という土地の違いでもあるのだろうか。
(『東京右半分』のインタビューより)

そしてこの写真展に際しては、来たひとだけにわかる超特別展示!もあり、上野・浅草で買い付けてきた激渋グッズ特販コーナーもあり、本展のために撮り下ろした世界最高のオリエント工業製ラブドールのスペシャル絵はがきセットも用意しました。特に絵はがきセットは数に限りがあるので、早めのゲットお願いします!


会期:2011年11月25日[金] ー 2012年1月9日[月・祝]

展覧会詳細はこちらから:




「ぴんから体操」の自費出版作品集を会場で先行発売中!

VOBO妄想芸術劇場を読んでいただいているみなさまにはおなじみ、日本アンダーグラウンド・エロティック・アート界が生んだ、不世出のアウトサイダー投稿アーティスト「ぴんから体操」の作品集を、NADiffで特別先行発売中!


だれでも自分の作品集が印刷/電子出版の両方で実現できるという「BCCKS」のシステムで、これから妄想芸術劇場のスター・アーティストたちの作品集を続々発売予定ですが、まずは第1弾として「ぴんから体操」をご覧いただきます。

印刷本のほうは文庫本サイズ、オンデマンド印刷なので、お値段は3500円(予価)と少々お高いですが、これは他に類のない貴重な資料だし! 電子書籍版のほうは12月初旬にはダウンロード開始予定で、こちらは1500円(予価)とお買い得。PCはもちろん、iPadでもiPhoneでもAndroidでも読めます。


しかし印刷版のほうも、「これがオンデマンド?」と驚くような、しっとりと美しい仕上がり。僕もびっくりしました。ぜひ会場でお手にとってご覧ください。しかも約300ページというウルトラヘヴィなボリューム。これから販売サイトも整備していきますが、いま現在、この本を購入いただけるのはNADiffの会場のみになります。レアブックス好きのみなさま、アウトサイダー・アート・ファンのみなさま、そしてエロ愛好家のみなさまに、自信を持っておすすめします!!!

BCCKS http://bccks.jp/
VOBO 妄想芸術劇場 ぴんから体操 http://vobo.jp/pg94.html

VOBO 妄想芸術劇場  ぷりりん

投稿の数こそ多くないが、「ぷりりん」の画面には不思議な魅力がある。漫画的でフラットな画面。ところが、スキャンされた画像では判別できないが、原画をよく見ると、そこに微妙な凹凸があることに気がつく。実は塗り込められた背景の上に、丹念に切り抜かれた主人公=全裸女性を貼り重ねて、ぷりりんの絵はつくられているのだ。

女体のカーブはもちろん、乱れた髪から噴出する大便まで! あるときはほとんど紙切り細工のような、しかしそれでいて結果としてまったく立体感のない画面。その途方もない労力は、いったいなんのためになされているのだろうか。




吉永マサユキ写真展『SENTO』@Gallery Shuhari

来週火曜日、12月6日から四ッ谷3丁目のギャライー・シュハリにて、吉永マサユキの写真展『SENTO』が開かれます。

吉永君と言えば暴走族など、ハードコアなひとびとのポートレートで有名ですが、今回展示するのは彼がまだ写真家のアシスタントをしていた1993年に、大阪十三の銭湯で撮った男たちの入浴シリーズ。吉永くんの原点とも言うべき作品ですが、これまでほとんど公開されることはありませんでした。

大阪のおっさんたちがチンコ丸出しで風呂に浸かったり、体を洗ったりしている姿は、まことに日常的でありながら、いざプリントになってみると不思議な超現実感もあり、単なるルポルタージュとは次元のちがう写真表現になっています。




個人的に吉永くんは長い友人ですが、僕が最初に見せられた写真がこの銭湯シリーズで、そのときはびっくりするとともに、こんな写真が撮れる人間関係を築いている彼に、ちょっと嫉妬したものでした。

今回の展覧会では、その銭湯シリーズが並ぶほかに、海外販売用に制作されたという1000部限定の写真集も会場で販売されます。「表装には手拭いを使用。全5種類の装丁からお選びいただけます」ということなので、要チェックですねえ。また、期間中には根本敬などとのトークもあるので、これもディープそう!

吉永マサユキ 写真展 「 SENTO 」
会  期:2011年12月6日(火)〜12月26日(月)
12:00〜20:00(最終日も20:00まで)  月曜休み(ただし、12月26日は開廊)
オープニングパーティ:2011年12月6日(火) 18:00〜20:00
会  場:GALLERY SHUHARI
東京都新宿区四谷3-13 大高ビル3F  (丸の内線「四谷三丁目」徒歩2分)
TEL 03-5269-1436
http://www.gallery-shuhari.com/

■期間中、トークショーを開催します。
12/10(土) 19時〜 吉永マサユキ×清水穣さん(写真評論家)
12/17(土) 19時〜 吉永マサユキ×根本敬さん(特殊漫画家)
12/24(土) 19時〜 吉永マサユキ×町口覚さん(アートディレクター)
入場料 各1,000円ドリンク付き。
<問合せ GALLERY SHUHARI  TEL 03-5269-1436>

SENTO  Masayuki Yoshinaga

今から20年ほど前、吉永マサユキが写真家となるきっかけとなった初期作品『SENTO』。
その内容から、日本では発売が困難でしたが、このたび海外販売用に限定1000部を製作。解説=清水穣。11月18日、個展会場および極一部の書店にて発売開始。詳しくは東京キララ社まで。

定価:3,500円+税
B5上製/72P
発行:東京キララ社
03-3233-2228

2011年11月24日木曜日

広島トークショー:チケット残りわずか!

11月27日に、広島の音楽喫茶ヲルガン座で開催されるトークショー。チケットがあと数枚になってしまったそうです。当日行けばなんとかなるだろうとか思ってるひと、急いでご予約を!


暗夜小路 上野〜浅草アンダーグラウンド・クルーズ  25日金曜開幕!

恵比寿のアートブックショップNADiffの地下にある小さなギャラリーで開く写真展『暗夜小路 上野〜浅草アンダーグラウンド・クルーズ 』、いよいよ今週金曜日がオープニングです。初日の夜にはささやかなレセプションがあります。とても小さなスペースなので、ご不便おかけすると思いますが、よろしければ遊びに来てください。

暗夜小路 上野〜浅草アンダーグラウンド・クルーズ


なるべく都心から近いこと。なるべく家賃や物価が安いこと。エネルギッシュな町が生まれる要素は、このふたつしかない。マスコミに教えられるのでもなく、ディベロッパーの戦略に踊らされるのでもなく、いま東京の若者たちがみずから見つけつつある新たなプレイグラウンド、それが「東京の右半分」だ。


獣が居心地のいい巣を求めるように、カネのない、でもおもしろいことをやりたい人間は、本能的にそういう場所を見つけ出す。ニューヨークのソーホーも、ロンドンのイーストエンドも、パリのバスティーユも、そうやって生まれた。


現在進行形の東京は、六本木ヒルズにも表参道にも銀座にもありはしない。この都市のクリエイティブなパワー・バランスが、いま確実に東、つまり右半分に移動しつつあることを、君はもう知っているか。


今年12月刊の『東京スナック飲みある記』(大洋図書)、来年3月刊の『東京右半分』(筑摩書房)、2冊の新刊発売の予告編としてお送りするトーキョー・イーストエンドのミニ・トリップ。きょう、お連れするのは上野から浅草かいわいだ。


ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル。東京でいちばん古くさくて、いちばん猥雑で、いちばん刺激的なワイルドサイドにようこそ!

2011年11月25日[金] ー 2012年1月9日[月・祝]

《オープニング・レセプション》
11月25日[金] 18:00?20:00

《トーク・イベント》
12月3日[土] 18:00?20:00
鬼海弘雄(写真家)×都築響一

12月22日[木] 18:00?20:00
戌井昭人(劇作家・鉄割アルバトロスケット主宰)×都築響一
(両日とも入場無料、予約不要ですが、席数にかぎりがあるので、早めにお越しください!)

なお、この写真展に際しては、来たひとだけにわかる超特別展示!もあり、上野・浅草で買い付けてきた激渋グッズ特販コーナーもあり、本展のために撮り下ろした世界最高のオリエント工業製ラブドールのスペシャル絵はがきセットも用意しました!

ナディッフ・オリジナル ラブ・ドール ポストカードセット
撮影:都築響一 / 8種類・おまけしおり付き / 1,050円(税込)

そしてさらにさらに!!!

「ぴんから体操」の自費出版作品集を会場で先行発売!

VOBO妄想芸術劇場を読んでいただいているみなさまにはおなじみ、日本アンダーグラウンド・エロティック・アート界が生んだ、不世出のアウトサイダー投稿アーティスト「ぴんから体操」の作品集がついに完成しました。


だれでも自分の作品集が印刷/電子出版の両方で実現できるという、グラフィック・デザイナー松本弦人さんが提唱したプロジェクト「BCCKS」のシステムで、実はこれから妄想芸術劇場のスター・アーティストたちの作品集を続々発売予定なのですが、まずは第1弾として、この方しかいないでしょうという「ぴんから体操」をご覧いただきます。


印刷本のほうは文庫本サイズ、オンデマンド印刷なので、お値段は3500円(予価)と少々お高いですが、これは他に類のない貴重な資料だし! 電子書籍版のほうは12月初旬にはダウンロード開始予定で、こちらは1500円(予価)とお買い得。PCはもちろん、iPadでもiPhoneでもAndroidでも読めます。電車の中とかで読むには、そうとう勇気いりますが・・・。

しかし印刷版のほうも、「これがオンデマンド?」と驚くような、しっとりと美しい仕上がり。僕もびっくりしました。ぜひ会場でお手にとってご覧ください。しかも約300ページというウルトラヘヴィなボリューム。これから販売サイトも整備していきますが、いま現在、この本を購入いただけるのはNADiffの会場のみになります。レアブックス好きのみなさま、アウトサイダー・アート・ファンのみなさま、そしてエロ愛好家のみなさまに、自信を持っておすすめします!!!

BCCKS http://bccks.jp/
VOBO 妄想芸術劇場 ぴんから体操 http://vobo.jp/pg94.html

岩手県花巻市の小さな美術館るんぴにい

宮沢賢治で有名な花巻市に、「るんぴにい美術館」という小さな美術館があります。この地で活動する社会福祉法人光林会が運営する、アウトサイダー・アートに特化したミュージアムです。

僕もかつて何度か取材に訪れた経験がありますが、岩手はアウトサイダー・アーティストの発掘、育成が盛んな土地で、何人もの重要な作家が世に出ています。今回の展覧会『うちの理想宮 〜パラダイス・シフト!〜』は、地元を中心に7人ほどのアウトサイダー・アーティストの作品を集め、それぞれの作家のテーマに合うような、僕の写真をいっしょに展示するという・・・まことにありがたい企画です。

 フランス第2の都市リヨンの郊外・オートリーヴという小さな村に「理想宮」と名付けられた石でできた宮殿があります。
 これは、フェルディナン・シュヴァル(1836?1924)という郵便配達夫が1879年から33年の月日をかけて、独りで石を積み上げ、セメントで固めて作ったものです。
 当時の町の人々は、シュヴァルを「庭を石で一杯にしている哀れな狂人」として嘲笑しました。シュヴァルは仕事を終えた後、人目につかない夜の時間に宮殿づくりに汗を流しました。
 出来上がった宮殿は、その後アンドレ・ブルトンをはじめとするシュルレアリストたちの感嘆の的となり、1964年には国の重要建造物に指定されています。
 本展でご紹介するのは、現在を生きるシュヴァルの末裔たちともいうべき作り手たちです。糸・布・割り箸、そして絵の具……それぞれが自分の魂が反応する素材を積み重ねて作った一人ひとりの理想宮にほかなりません。
 作り手たちが生み出した姿かたちの美しさと、その薄皮を1枚めくると現れる、煮えたぎるマグマのような創造の歓びを感じていただきたいと思います。
 作り手たちのクリエイティビティが、人と人とを隔てる壁を打ち壊す快感を共に感じていただければ幸いです。 (公式ブログより)


山崎 健一

まあ、僕の写真はどうでもいいのですが、展示される作品は、かなりおもしろそうなものばかり。不思議な図面ばかりを描く山崎健一、手作りのドレスを作り続ける四日市ゆり、廃材をなんでもボールペンにしてしまう三上正泰など、興味津々です。12月17日の土曜日には、僕もトークショーに呼んでもらえるので、いまから楽しみ。この時期に岩手にいらっしゃるみなさまは、ぜひお寄りください。

四日市 ゆり

るんぴにいはギャラリーのほかにアトリエ、カフェ、菓子工房などを併設していて、障害者たちの自立を支援しています。地元産の小麦や雑穀をブレンドしたパンや、花巻の卵で作ったプリンとか、おいしそうですよ!

うちの理想宮 〜パラダイス・シフト!〜

2011年11月10日(木)〜
2012年2月14日(火)
開館時間 10:00〜17:00(水曜日休館)

都築響一トークショー:
2011年12月17日(土) 
16:00スタート
定員50名:参加無料・要申し込み
詳細はこちらから:http://museum-lumbi.kourinkai.net/

三上 正泰

るんびにい美術館 
〒025-0065 岩手県花巻市星ヶ丘1丁目21-29 
TEL&FAX 0198-22-5057

VOBO 妄想芸術劇場 暗藻ナイト

ニャン2には何人もの名物投稿イラスト職人が存在するが、今週ご紹介する「暗藻ナイト」も、ニャン2の長い読者にはおなじみの名前である。


暗藻ナイトの描く世界はSMとスカトロのミックスなのだが、なにより特筆すべきはその圧倒的な画力である。画面の構成、表情の迫力、縄の結び目までおろそかにすることのないディテールへのこだわり、そしてマグマのように噴出する黄金色のウンコ・・・。「玄人はだし」という言葉では物足りない、まさしくプロのレベルのイラストレーションだ。


暗藻ナイトは、実は同人誌の世界ではかなり知られた存在だ。それも「女王様とM男」というピンポイントなジャンルで。もともとSM雑誌に投稿していたのが、いつのころからか同人誌を発表するようになり、そのクオリティがマニアたちに認められて、ついには『コミックマゾ』(スター出版刊)などのマニア向け商業誌にまで特集が組まれるようになった・・・。


2011年11月17日木曜日

ART iT:おかんアートという時限爆弾

ウェブマガジン『ART iT』で連載中の『ニッポン国デザイン村』。今月お送りするのは、先ごろ神戸で自費出版された『おかんアート』に触発された、おかんアート・リポート。こないだ本と展覧会のお知らせをちょっぴり書きましたが、今回は図版もたっぷり、楽しく読んでいただけるはず。



いちばん身近にありながら、いちばん無視していた、しかしときによってはプロの現代美術よりも、アウトサイダー・アートよりも強烈な破壊力を秘めた、アートの最終兵器「おかんアート」。読んでもらえたら、自分のまわりにあるおかんアートをぜったい見つけにいきたくなります!



メインストリームのファインアートから離れた「極北」で息づくのがアウトサイダー・アートであるとすれば、もうひとつ、もしかしたら正反対の「極南」で優しく育まれているアートフォームがある。それが「おかんアート」。その名のとおり、「おかあさんがつくるアート」のことだ。なにそれ?と思うひともいるだろうが、たとえば久しぶりに実家に帰ると、いつのまにか増えている「軍手のうさぎ」とか、スナックのカウンターにある「タバコの空き箱でつくった傘」とか、あるでしょ。ああいうやつです。





どこにでもあって、だれからもリスペクトされることなく、作者本人もアートとはまったく思わず、売ったり買ったりもできず、しかしもらえることはよくあり、しかももらってもあまりうれしくない——そういうのが「おかんアート」の真髄だ。

http://www.art-it.asia/u/admin_ed_contri8_j/OQNqomdBcjalC2VfzFWH/

濱口健展で公開対談:18日金曜日



東銀座のMEGUMI OGITA GALLERYで始まったばかりの『濱口健「Selected old stuff Vol.1」展』で、作家と公開対談を行います。直前のお知らせで申し訳ありませんが、今週金曜日、19時からスタートです。

1972年生まれの濱口健は、ご覧のように絵と文字とを重ねて描く、不思議な作風の若き画家。今回が初個展だそう。どうして対談相手に僕が選ばれたのか謎ですが・・笑、楽しい対話になりそうな予感。予約不要、入場無料なので、お時間ある方はぜひお立ち寄りください。

濱口健/Ken Hamaguchi「 Selected Old Stuff Vol.1-」
MEGUMI OGITA GALLERY
東京都中央区銀座2-16-12 B1
03-3248-3405
http://www.megumiogita.com/

VOBO 妄想芸術劇場 セーラーマン

1990年から92年あたりのニャン2初期に、独特なタッチの投稿を繰りかえしていたイラスト職人のひとりが「セーラーマン」である。


一見しておわかりのようにセーラーマンの画風には当時、そして現在でも主流を占める漫画ふうのタッチとは正反対の、正統的なデッサンを思わせる描線や、「挿画」と呼びたい古風な雅味が認められる。フラットな画面、どろどろな陵辱シーンとは無縁の、ユーモアあふれたモチーフ。そして特に単純な背景の前でポーズを取る全裸女性たちに見られる、ただただ描くことの純粋な悦び。それはほとんど、画材の使い方を覚えた少年が、胸の奥に秘めた欲望をはじめて紙上に発散したスケッチブックのようだ。



http://vobo.jp/mousou28.html

田上允克展@銀座・画廊香月


去年もこのブログで紹介した、山口県小野田在住の画家・田上允克(たがみ・まさかつ)さんの個展が、銀座の小さな画廊で開催中です。


田上さんについては、去年の記事を参考にしていただきたいですが(http://p.tl/aLjk)、美術業界のトレンドとはまったく無縁の場所で、自分だけの世界をひっそり追求しつづけている孤高の作家。その画面には独特の優しさと、ユーモアと哀しみとが同居しています。

会場となる画廊香月は、銀座の奥野ビルという、ものすごく古風で味のあるビルの6階にあります。このビルはいまやギャラリー・ビルのようになっていて、各階にいろんな画廊が入ってます。この機会に探検してみてください。なにせ、エレベーターからして手動ですから!

田上允克スペシャル「匿された息」
11月13日〜11月27日
画廊香月
中央区銀座1?9?8奥野ビル605
03-5579-9617

小悪魔ageha 中條編集長・退任!

尊敬する編集者である『小悪魔ageha』の編集長・中條寿子(なかじょう・ひさこ)さんが、『ageha』を離れ、退社すると聞いてびっくり。ご自身が経緯を書いている『週間金曜日』を買いに走りました。


「1993年のコギャル発祥年に15歳だった」中條さんは、ご存じのように2005年にスタートした『小悪魔ageha』によって、コギャルからキャバ嬢にいたる欲望の身体表現を、ひとつのスタイルにまで高めた希有な編集者です。

その彼女が、分身とも言える『ageha』を去ることになったのは、ひとつにはいつまでも同じことを繰りかえしていたくないということ。そしてもうひとつ(こっちが主な理由だと思いますが)、「版元はもうこりごり」だというのです。

『ageha』の発行元であるインフォレストは、中條さんが入社して間もなく「金融屋に買収され・・ゴミのような扱い」を受けながら、「いつのまにか親会社が変わったり・・現れてもすぐに消える身元がよくわからないおじさんたち」が、好き勝手なこと言っては、編集者たちが死にものぐるいでつくったものの、利益だけをかすめとっていく、そういう態勢にほとほと嫌気がさしたと書いています。

中條さん曰く、これはインフォレストにかぎったことではなく、中小の出版社はどこも似たり寄ったりで、その原因は「いまの出版界が非常に混乱しているからで、雑誌はおまけで、”おまけ”が本命という雑誌破壊のA級戦犯が潤う反面、ほんとうにおもしろいページだけを求めている読者が宙に浮き、私たち編集者という小作人は『いいページを作りたい』という編集のアイデンティティさえ奪われた」と。そのとおり!!!

最近の、特に女性誌の「おまけ戦略」には、常軌を逸したものがあります。一冊ずつがビニールヒモでくくられた雑誌の山は、書店と言うより八百屋の特売コーナーのようでもあり、ほんとうに醜い光景です。「おまけ」の包み紙と化した本誌のページを作らなくてはいけない編集者の悲哀も、察するにあまりあります。経営陣だって、これが長く続くとはだれも思っていないはず。大手はどこも、すでに勝ち逃げ、売り逃げのシミュレーションを練っているにちがいありません。

書店の店頭はこのとおり、これって雑誌なんでしょうか。

それでも本を、雑誌を愛することをやめない中條さんは、すでに新しい形でのスタートを準備中だそう。構造的な出版不況の中でもがきつつ、どうにかしていいものを作りたいと苦闘中の編集者のみなさん、ぜひご一読を! 共感し、励まされること確実です。

A級戦犯の社屋には「No.1」の旗が誇らしげに!

2011年11月9日水曜日

大竹伸朗・シネマインデックス 公開対談

日英バイリンガルのウェブマガジン『Art It』で連載され、iPhoneアプリにもなった『大竹伸朗 シネマインデックス』。その発売にあわせて、来週14日の月曜日、青山で公開対談を開催します。


CNAC LAB 第 2 回シンポジウム開催決定。ゲストに大竹伸朗と都築響一を迎えます。
CNAC LAB の第2回目のシンポジウムのテーマは「映画」。現代美術作家・大竹伸朗と、編集者・都築響一をゲストに、映画への深い造詣と愛情、また大竹作品を成立させてきた重要な要素が仄見える、興味深い映画談義が展開される予定です。(公式サイトより)

ふたりとも同じジェネレーションで、同じ映画を観て育ってきただけに、かなりマニアックな映画話になるであろうことは必至(でもウンチクじゃありません)! 入場無料なので、お気軽にご予約の上、おいでください・・・平日ですけど。

なお、CNACというのはコスチューム・ナショナルというファッションメーカーが青山に開いたノンプロフィットのアートスペース。場所がすごくわかりにくいので(最寄り駅は表参道)、いらっしゃる際はお早めに。僕も迷いました!

開催日時: 2011 年 11 月 14 日 ( 月 ) 19:00 - 21:00
ゲスト: 大竹伸朗、都築響一
開催場所: CNAC LAB
定員: 80 名(先着順/無料)

お申し込みはこちらから:
http://www.cnac.jp/cnac/index.php?entry_id=0000000001

iPhone アプリ  大竹伸朗 シネマインデックス

画家大竹伸朗の映画への造詣の深さのみならず、独特な映画の見方が垣間見える映画談義。2010年8月にART iTウェブ版に掲載されたシネマ・インデックスに加え、本アプリのための録りおろしインタビューを追加。スチルへの興味、日本映画に対する愛情、音楽や映像など彼の作品を成立させている要素が仄見える作品画像や大竹自身のパンフレットコレクション画像も収録。本文中に出てくる映画、テレビ番組データベース付き。



暗夜小路 上野〜浅草アンダーグラウンド・クルーズ

ツイッターなどですでにお知らせが流れていますが、この25日から来年1月初めまで、恵比寿ナディッフの地下にある小さなギャラリーで写真展を開きます。


『暗夜小路 上野〜浅草アンダーグラウンド・クルーズ』と名づけられたこの小展覧会は、これまで『東京右半分』などの取材を通して知ることになった、いま動きつつある東京の右側を探る試みの一環であり、そうした動きの震源地とも言うべき上野から浅草にかけてのエリアを歩くミニ・トリップです——

なるべく都心から近いこと。なるべく家賃や物価が安いこと。エネルギッシュな町が生まれる要素は、このふたつしかない。マスコミに教えられるのでもなく、ディベロッパーの戦略に踊らされるのでもなく、いま東京の若者たちがみずから見つけつつある新たなプレイグラウンド、それが「東京の右半分」だ。
獣が居心地のいい巣を求めるように、カネのない、でもおもしろいことをやりたい人間は、本能的にそういう場所を見つけ出す。ニューヨークのソーホーも、ロンドンのイーストエンドも、パリのバスティーユも、そうやって生まれた。
現在進行形の東京は、六本木ヒルズにも表参道にも銀座にもありはしない。この都市のクリエイティブなパワー・バランスが、いま確実に東、つまり右半分に移動しつつあることを、君はもう知っているか。
今年12月刊の『東京スナック飲みある記』(大洋図書)、来年3月刊の『東京右半分』(筑摩書房)、2冊の新刊発売の予告編としてお送りするトーキョー・イーストエンドのミニ・トリップ。きょう、お連れするのは上野から浅草かいわいだ。
ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル。東京でいちばん古くさくて、いちばん猥雑で、いちばん刺激的なワイルドサイドにようこそ!
都築響一


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 ナディッフ アパートでは、この年末に満を持して、木村伊兵衛賞写真家であり数々の問題作を発表しつづける名編集者・都築響一の個展を開催いたします。
 2010年以降にかぎっても『ロードサイドUSA』(アスペクト)、『夜露死苦現代詩』(筑摩文庫)、『演歌よ今夜もありがとう』(平凡社)などなど刺激的な著作の上梓も続いております。
 表参道のNADiffで行った「大竹伸朗×都築響一:青山秘宝館」(1998.4-5)から10余年。その後のアートシーンや写真シーンが当時とくらべて活性化されていたり、マーケットが成熟してきたりというような話はついぞ聞きません。そのような環境を前提とせざるを得ない若者たちに対して、それでも「アートとは何か」という本質的な問いかけを常に行ってきたのが都築響一に他なりません。
 この度のナディッフ・ギャラリーの展示では、上野〜浅草の驚愕のアンダーグラウンドをお披露目いたします。
 日本の近代美術の受容や展開にとって最も重要でかつ象徴的な場所である浅草と上野は、近代もどんづまりの閉塞感漂う今日でもなお、多様で重層的な文化環境がしっかりと息づいています。
 ニューハーフ、デスメタル、極道ファッション、ふんどしバー、そしてリアルなラブドールなどなど狂おしいほどに真摯な人々の営みがそこにはあります。これらのリアルカルチャーを都築響一自ら厳選し、恵比寿の地下ギャラリーにエディトリアルされた空間を構成いたします。
 “東京右半分”のエッセンスがたっぷりつまった上野〜浅草のマインドや有り様から、どうしてもそのようになってしまうことによってそのようにしかならない真の意味での“アート&ライフ”を間近で見つめることが出来るでしょう。
 そこには、アートにとって本質的なことがらが自ずから浮かび上がってくるにちがいありません。
協力:オリエント工業 / ㈱サンエムカラー

会期中には鬼海弘雄さんや戌井昭人さんをお招きしたトーク・イベントも開催。しかも写真の展示だけではなく、ウルトラスペシャルな仕掛けも用意してあります! 展覧会にあわせた特製グッズも、たたいま鋭意準備中! トークのほうは席数が少ないので、早めのご来場を。

会期:2011年11月25日[金] ー 2012年1月9日[月・祝]
展覧会詳細はこちらから:



《トーク・イベント》
12月3日[土] 18:00-20:00(仮)
鬼海弘雄(写真家)×都築響一

12月22日[木] 18:00-20:00(仮)
戌井昭人(劇作家・鉄割アルバトロスケット主宰)×都築響一

いずれも NADiff a/p/a/r/t 店内 にて
入場無料(予約不要)
※30名様以降は立見となりますのでご了承ください。

夜露死苦現代詩2.0 ANARCHY


新幹線が京都駅に着くと、吐き出された観光客は「京都駅」という巨大な壁をさっさとくぐり抜け、新幹線ホームの反対側=北側に広がる、だれもが知ってる京都の市街に散ってゆく。でも、京都駅の南側にはもう半分の京都が広がっている。東寺や伏見稲荷といった有名寺社をのぞけば、観光客はだれも知らない、そして(北側の)京都市民からも「駅南でしょ」と見下される、もうひとつの京都が。


そんな「京都駅南」を縦断して走るのが近鉄京都線だ。京都駅から大和西大寺行きの電車に乗って、車窓に映る風景を眺めていると、ここがいかに「そうだ京都行こう」の京都とはちがう、もうひとつの京都であるかが実感できる。できたばかりの巨大ショッピングセンター、ワコールや京セラのオフィスビル、倉庫、国道沿いのチェーン店……。ここは「京都」というカンムリのついた、日本のどこにでもある郊外都市だ。


伏見、丹波橋、桃山御陵前といった古風な名前の駅を過ぎ、電車が宇治川を越えるころ、今度は進行方向右側に広々とした田園風景が突然、出現する。そしてその反対側には見渡すかぎりの団地群。もともと二ノ丸池と呼ばれていた場所を干拓して1970年代に造成された「向島(むかいじま)ニュータウン」だ。1999(平成11)年、小学校校庭で遊んでいた児童をナイフで刺殺した21歳の浪人生・岡村浩昌=「てるくはのる」が、警察の追っ手を逃れて団地屋上から飛び降り自殺した場所でもある。


1981(昭和56)年、大阪府枚方市に生まれたキタオカケンタは、3歳になるかならないかのころ、国道1号線で20キロ足らずしか離れていない向島ニュータウンに引っ越してきた。そしてこの場所からANARCHYというラッパーの物語が始まる。


特設サイトでは『I'm A Rapper』『Fate』『K.I.N.G.』『Go Johnny Go!』の4曲が聴けます。ぜひ爆音でかけながら、お読みください! なお来月の1月号は、恒例の創作特集ということで、「夜露死苦現代詩」を含む連載は1回お休みだそう。次回は1月はじめに出る2月号になります。よろしくお願いします。



VOBO妄想術劇場 山本一夫 2


前回に続いてお送りするオムツマニア・山本一夫の作品集。今週ご紹介するのは、すべてモノクロの線描による作品群。彩色作品のためのスケッチではなく、これはこれで完成されたシリーズのようだ。

色づけがなされていないぶん、こうした黒一色の作品群では、作者の思いというか妄想が、さらにナマのかたちで紙上から立ち現れているようである。ときおり添えられている解説、というか絵をパラフレーズする物語ようなものも、そのアブノーマルな感覚を強化している。



2011年11月2日水曜日

季刊『TRASH=UP!!』最新号に三上寛さんとの対談収録!

「日本で唯一のトラッシュカルチャーマガジン」という触れ込みの『トラッシュアップ』最新号に、今年7月に西荻窪ZEN PUSSY にて行われた三上寛ライブ&公開対談が、全4段組で12ページ、めちゃ長くて充実です!


なんか兄弟みたいで恥ずかしい・・

しかしこの雑誌、もう10号ということですが、今回も・・・

●ジョン・カーペンター特集 最新作「ザ・ウォード/監禁病棟」
●再検証「スクリーム」シリーズ 
○夢の初対談! 三上寛×都築響一 
○バスタオルアクションの魅力を語りつくす 
○二階堂和美の人生相談 
○90年代、独創的ネオ江州音頭で「ワールドミュージック」ブームの虚妄を鮮やかに切り裂いたマッド唯丸こと初代・桜川唯丸師匠インタビュー。
○「サウダージ」
○チャン・ギハ ライヴレポート 
○緊急対談!西村(THE LOODS)×ISHIYA(FORWARD) 
○話題の女性SSW・安藤明子インタビュー 
○テクマ!インタビュー 
○大好評連載!柳下毅一郎訳/リチャード・フライシャー自伝「泣くときにはそう言って」第二回 
○DooM インタビュー

などなど、わかるひとにはわかる、しかしわからないひとには理解不可能な濃厚企画満載で、しかも今回から版型もA4にスケールアップ、しかも300ページ、しかもお値段が税込み1575円って・・安すぎでしょう! これ、採算取れるんでしょうか。こんな貴重な雑誌はぜったい潰れては困るので、みなさん購入して応援しましょう!

中野で注目のアウトサイダー・アート展開催中!

昨年パリで開かれ、記録的な入場者数で話題になった『アール・ブリュット・ジャポネ』展に出展した、我が国のアウトサイダー・アーティスト15人による、70点におよぶ作品がただいま中野で展示中です。



中野サンプラザ 1Fロビー 10月29日〜11月7日
サンモール商店街 空中ギャラリー 11月1日〜15日
中野ブロードウェイ 階段ギャラリー 11月3日〜23日

と会場・会期がわかれていますが、すでに評価の定まったアーティストたちの作品がまとまって見られる、東京都心部では希有なチャンスです(こういうのはいまや、地方美術館のほうが熱心ですからねー)。5日には午後から夜まで、レクチャーやフィルム上映など、さまざまなイベントも予定されているようなので、興味ある方はぜひ! 美術館という閉ざされたシリアスな空間ではないぶん、かえって楽しいかも。

主催:社会福祉法人 愛成会(地元・中野で障害者支援施設などを運営している団体です) http://www.aisei.or.jp/

今週日曜日・藤原新也さんと公開対談


先週のブログでお知らせしたとおり、秋葉原のアートスペース「3331 Arts Chiyoda」で11月6日の日曜日、藤原新也さんと公開対談があります。

前日からオープンする個展『書行無常』は、写真家・文章家である藤原さんが過去2年近くにわたって日本各地で撮り歩いた写真と、書を融合した展覧会です。

2010〜2011年。日本、中国、印度、そして震災渦の日本。
藤原新也が現場を旅し、写し、即興で大書した言葉の軌跡を、
120点超の特大プリントと巨大書道作品を中心に
一堂に展示致します。(公式サイトより)

ちなみにこの展覧会は、プリント制作で協力企業などが若干参あるものの、あとはすべて藤原さんの自腹開催! かなりの費用がかかってるはずですが、それを入場料その他の収入でまかない、経費をのぞいたあと発生する収益は全額、津波および原発被災地への支援金に充てるということです。この藤原さんの気合いを、みなさんもガチンコで受け止めてください!

なおトークショーは予約制で、すでに大半の席が埋まっているそうです。まだの方は、急いでご予約を!

2011年11月05日(土)〜2011年11月27日(日) 会期中無休
11:00-20:00(日曜日のみイベント開催のため11:00-16:00)
入場料 500円(ベント参加料:前売券1,500円/当日券2,000円)

展覧会案内サイト::http://www.fujiwarashinya.com/shogyomujo
3331公式サイト:http://www.3331.jp/schedule/001252.html

問い合わせはこちらまで:shogyomujo@fujiwarashinya.com

タイの洪水について考えたこと

先日、FacebookとTwitterに、タイの洪水に関する日本メディアの報道について考えたことを少し書いたら、同意も反論も含めて、意外なほど多くの反響をもらいました。なので、今回はその補足を少しだけ。

最初に、そのとき書いたメッセージを転載します:

タイの洪水報道、なぜ日本企業のことばっかり?

 連日テレビでも新聞でも報道されてるタイの洪水ですが、9割方は「おかげで日本企業の工場にも甚大な被害・・」って、その前に死んだり家を失ったりしてるタイ人がたくさんいるんじゃないの?と突っ込みたくなりませんか。 
 バンコクからのテレビ中継でも、「王宮にも水が!」みたいに声を張り上げてる特派員のそばで、膝まで水に浸かったおばさんが、平気で屋台営業してたり、オヤジがタイヤの浮き輪でぷかぷかしたり、発泡スチロールの板に子供乗っけてイカダ遊びしたり・・悲惨な状況ではあるけど、ちゃんと水と折り合って生きてるタイ人がたくさんいることを、もっと見せてほしいと思います。 
 バンコクの友人から、こんなメールが届きました: 
 おっしゃる通り、日本の報道は同じようなものだらけですね。 ナワナコンというアユタヤ下に位置する地域が浸水したときの、日本のニュース映像を見たのですが、その中でその近くの工場に勤務している年配の日本人が現地インタビューされていました。
 「なんとしても耐えてもらわなければ困る。なんてったって何億っていう設備だからね」と言ってるそばで、いくら設備代がかかってようが関係ないタイ人たちが汗水垂らして、必死に土のうを積み上げていました。
 その日本人はシャツにネクタイという格好だったので、土のう積みもしないで、さっきのことを言っているんだなあと、見てるこっちはなんだか空しい気持ちになりました。
 アユタヤ、ナワナコンという工場地帯は、ジェトロに紹介され、日本の会社が右へ習え的なもので工場を作り、何十万人というタイ人工員を雇ってきた場所だと、勝手に僕は解釈しています。日本人が勝手に来て、勝手に浸水して騒いでいるような。
 そもそもタイの人々は、水とともに生きてきた人たちだと思います。運河を使った交通機関もいまだに残っているわけですし。
 彼らには都築さんの言うようにゆるさもあり、浸水したところに網を放り、魚をとっているというたくましさもあります。もちろん本当に困っている人々や亡くなっている人々もいますが、外野がガヤガヤ騒ぐ問題なのかなあ、とも思ったりしています。
 そして僕は、連日の日本のテレビ局の特派員、駐在記者の受け売り的な取材や、日本人居住地区での在タイ日本人への不安を伝えるだけのぬるい仕事ぶりにはビックリしています。

書いてるうちにバンコクに行きたくてたまらなくなってしまいましたが、ご承知のとおりいまもバンコクを含むタイの水害は深刻な状況です。水が引いたあとも、というかそのあとがむしろ大変で、上水が汚染されたり、工場から漏れた薬品や油での汚染もあり、電線からの漏電、感電の危険もあります。僕個人としては、バンコクにいる友人たちの安否はもちろん、前に写真集にしたタイの田舎のお寺の地獄庭園も、どうなってるか心配でたまりません。
でも、そういうことすべてを知った上で、日本ではなく現地や欧米のメディアによる報道や、現地のひとびとのブログや画像サイトなどへの投稿を見ていると、「ああ、タイ人はこんなふうに水と折り合って生きていけるんだなあ」と、そのたくましさ、おおらかさ、ポジティブさに感動してしまいます。
前に足立区竹ノ塚を「東京右半分」で取材したとき、竹ノ塚で生まれ育った友人が、「台風来ると床下浸水しちゃって、下水とかなかったからさ。家の前がみんな川状態になって。雷魚の一本釣りとか、鯉とかも釣れる(笑)。亀とか、蛇も泳いできて。雨になるとイカダで学校行ってたし!」なんて話を笑いながらしてくれましたが(ここでまだ読めます http://p.tl/7pyR)、ほんの少し前までは、日本にもそういうメンタリティはちゃんと残ってたんですよね。
というわけで、これからお見せするのは通信社や、タイのひとたちがFacebookなどに投稿した「洪水だけど楽しくやってる!」写真集。商用利用じゃないので、引用お許しを。たとえば東京の隅田川とかがあふれたとして、僕たちはこんなふうに毎日を送れるでしょうか。





 http://p.tl/Jd0q










そしてこんなオヤジに、僕もなりたい!!!