2011年2月16日水曜日

ついに創刊! 『性生活報告アーカイブ』

本屋のエロ本コーナーに並ぶ彩度全開、ピカピカの大判エロ雑誌の影に隠れるように、平積みされることもないまま、棚刺しされている一冊の雑誌をご存じだろうか。『性生活報告』・・サン出版から昭和56(1981)年に創刊され、今年30周年を迎えたイブシ銀の輝きを放つアンダーグラウンド文化財である。

『性生活報告』には人気グラビア・アイドルも登場しないし、そもそも写真ページがわずかしかない。300ページ近いボリュームの、そのほとんどはモノクロページを埋める文字、文字、文字・・しかも値段は2000円もする。

『性生活報告』は「中高年生活誌」である。ようするに中高年の方が、みずからの性体験を書きつづり、編集部に送ってきた文章で構成される投稿誌なのだ。その多くは60〜80代なので、戦前の話から、モンペを無理やり脱がし・・なんて戦争中のエピソード、焼け跡のバラックで初体験・・などという、半世紀以上前のエロ思い出話が平気で、恐るべき密度で詰まっている。

『性生活報告』は、隠れたベストセラーでもある。すでに『性生活白書』をはじめとする模倣誌をいくつも生み出し、最初は季刊だったのが、いまは隔月刊になって、ますます順調。しかもその編集のほとんどが、新田啓造さんという名編集者ひとりの手によって30年間のあいだ、なされてきたのである。

そのように、めくるめくほどアナクロな『性生活報告』の魅力とは、なによりもまず投稿の文章力にある。戦前、戦中、戦後すぐの時代に教育を受けた人間ならではの、詳細を究めながらも格調を失わない、そしてあまりにも劇的な物語。その一編一編が、よくできた短編小説のように僕には読める。

『性生活報告アーカイブ』は、30年間の歴史のなかで傑作投稿を選び出し、文庫版で甦らせるシリーズだ。2月2日に第1弾の2冊——『出生前夜、私は母を抱きました』と『三十路未亡人の淫らな手記』が刊行され、これから毎月、新刊が2冊ずつ出る予定である。

3月2日発売 『防空壕で隣のおばさんと・・』『今なお新鮮な兄嫁との情交』
4月1日発売 『寝たふりをする可愛い妹、加津子』『町内婦人を飽食した空襲下の夜』

もう、タイトルを見ただけでドキドキしてくるでしょ。いまどきの、派手なだけで実は薄味のエロ本に物足りなさを覚えるベテラン愛好家たち、シロウトによるシロウトのための、リアルにして奇跡的な冒険譚を読みたいすべてのみなさまに手にとっていただきたい、これは昭和のリアルライフ・ヒストリーである。