2011年1月21日金曜日

東京右半分:民謡酒場でコブシに酩酊 前編

『民謡酒場という青春』という一冊の本が、旅の始まりだった。

山村基毅(もとき)さんというジャーナリストが書いたこの本は、昭和30年代からオイルショックまでの、高度経済成長期に東京の、それも吉原を中心に栄えた民謡酒場の盛衰を追った物語である。歌謡曲でも演歌でもなく、民謡を聴いて歌って飲んで踊れて、それも新宿でも渋谷でも池袋でもなく、かつて日本最大の遊郭であり、いまも日本最大のソープランド密集地である吉原に、よりによって何十軒もの民謡酒場があったとは、いったいどういうことなんだろう。



いま、2011年の東京で、民謡をカラオケで歌える酒場はいくらでもあるけれど、当時のスタイルを残す民謡酒場は、都内にも数えるほどしかない。浅草に1軒、吉原に1軒、向島に1軒、そして亀戸に1軒……。