2010年1月27日水曜日

ハイチの惨状をgoogle mapで!

日本のニュース番組では、もう忘れ去られた感のあるハイチ大地震。しかし被害の悲惨さは、日がたつにつれて、ますます明らかになってきています。CNNなどの海外ニュース局では、いまも毎日特集番組が放送中ですが、編集されたテレビニュースより、はるかに強いリアリティで迫ってくるのが、google map。とりあえず、ここクリックしてみてください。


広場に密集するテント、通りを歩く人々まではっきり識別できる、恐るべき解像度。こんなふうに自宅のパソコンが世界とつながってるって、すごい時代になっちゃいましたね!


東京右半分:下町風俗資料館









水面を見事におおう蓮・・の枯れ草が寂寥感を盛り上げる上野不忍池。湖畔にたたずむ白塗りの建物が、下町風俗記念館。1980(昭和55)年に開館して、今年で30周年を迎える老舗の資料館である。いまは全国各地に「昭和の暮らし再現館」みたいな施設がたくさんできているが、下町風俗記念館はその先駆けともいうべき存在。「田舎の民具は資料として残されても、都市生活者の日常を記録・保存しようという施設がまったくない」ことに危機感をいだいた区民や文化人の声に行政が動くかたちで、昭和42年に委員会が発足。昭和49年ごろから広く寄贈をつのって、それをただ展示ケースに並べるのではなく、”情景展示方式”と言われるようなシーン・メイキングのスタイルをとることができたのは、学芸員の石井広士さんによれば「設立に関わった方々が、震災前の暮らしを実体験として知っていたから」。震災、戦災、乱開発という3回の大変革を経験してきた人々が参加することで、再現された情景はリアリティの強度を増すことになった。






1階丸ごとと、2階の一部を使ってセットされた情景展示エリアは、通常のミュージアムのようにただ見るだけではなく、入場者が展示の中に入り込み、情景の一部になることができるようにつくられている。靴を脱いで畳の部屋に上がり込み、ちゃぶ台のお茶セットにかぶせた手ぬぐいを持ち上げてみたり、箪笥を開けて中の着物を見て、触って、そこに住んでいるはずの人間の気配を感じ取ることができるのだ。





http://www.chikumashobo.co.jp/blog/new_chikuma_tuzuki/

デザインの現場:e本棚について

またも休刊情報! ということでびっくりの隔月刊『デザインの現場』。いま出ているのは2月号ですが、3月27日発売の4月号で休刊になっちゃうそうです。これで老舗デザイン雑誌で生き残っているのは、『アイデア』ぐらいなのでしょうか。

今号で「e本棚」の記事が出ています。店を始めたきっかけとか、いろいろ話しているので、興味があるかたはご一読ください。


今週のマスト・バイ:『セレブマニア』by 辛酸なめ子





最近は文字本がほとんどだった辛酸なめ子先生の、久しぶりの漫画集『セレブマニア』。アメリカが誇る?実話紙『ナショナル・エンクワイアラー』みたいなカバーも楽しいですが(しかも本人のコスプレ入り)、注目は巻末に収録された「スペシャル対談・パリス・ヒルトンX辛酸なめ子」! 笑っちゃいますが、ほんとに対談してるんです。これはセレブマニアならずとも、必読でしょう。自分の中の邪悪な部分を、スリスリさすられる快感を味わえますよ。

なめ子先生の公式ブログ:http://sinsan.blog.smatch.jp/blog/2010/01/i-phone-b2f3.html


2010年1月20日水曜日

e-hondana、開店してます!



先週オープンした蔵書売り払いサイト「e-hondana」、すでにたくさんのかたが見ていてくれるようで、びっくりするやらうれしいやら。毎日500以上のアクセスがあるみたいで、ほんとうにありがとうございます。まだのかたは、ぜひこちらまで!


http://e-hondana.net/


しかし、どんなひとが、どんな本を買ってくれるのか、見てるとほんとに楽しいですね−! ネット販売なのに、お客さまの顔がちゃんと見える感じです。意外な友達が、意外な本をオーダーしてくれたり。すでに購入していただいたかたの、半分以上は東京以外のひとたちだし。これからもどんどん在庫を増やしていきますので、ときどきチェックしてみてください。
新着情報は、随時ツイッターで流しますので、フォローよろしくお願いします!


http://twitter.com/e_hondana


あと、何人かのかたから「意外と高いじゃないか」と、値付けについてのご質問をいただきました。こちらではほかのネット古書店の値段を調べて、それよりちょっと安め、でも転売するほど利幅はない、というのを値付けの基本方針にしています。そうじゃないと、業者にどかんと買われて、転売されちゃうんですよね。ごくたまに、ほかの店(のいちばん安いやつ)より高めのもありますが、これは僕の思い入れぶん・・・ということで、なにとぞご容赦ください!

訃報:浅川マキさんを偲ぶ


小林繁でびっくりしてたら、なんと浅川マキさんが急死されてしまいましたね。去年、久しぶりに新宿ピットインでステージを観たときは、まだまだお元気だったのに、唖然というか、ほんとうに残念でなりません。

一時、毎年末は池袋文芸座地下で開かれるライブに行かないと、その年が暮れないというほど、彼女のステージに通っていた時期があって、僕にとっては世界でいちばん大事なシンガーでしたから、公演先での突然の死は、ショックというほかありません。同じ思いを抱いていらっしゃる方も、多いと思います。ご冥福をお祈りしましょう。

浅川マキさんの、いま入手しやすい作品としては、ボリューム1から4まで出ているCDシリーズ『Darkness』を全部押さえるのが基本ですが、2003年には本人のエッセイ集『こんな風に過ぎて行くのなら』が出ていて、それがまた最高に素晴らしい内容です。この機会に、ぜひご一読ください。なにせ、版元の紹介文によれば、

30年の時が流れ、その時々の時代・気分を遠雷のように照らし出す初めてのエッセイ集。1970年代から2003年までに『ネクスター』『漫画アクション』『DOLL』などに掲載されたものをまとめる

ということですから。30年間ですよ! 初出誌も渋いラインナップだし。あと、レコード会社による浅川マキさんのウェブサイトがあって、その中に、2007年に書かれた自筆の文章が載っています。これがまたいい雰囲気で・・・。ここに転載させていただきますが、いま手に入るCDやDVDの情報もあるので、こちらもいちどチェックをお願いします。




EMI浅川マキ・サイト http://www.emimusic.jp/asakawa/main.htm




東京右半分:復興記念館



両国横網町公園に残る関東大震災と東京大空襲の記念施設。先週の東京都慰霊堂に続いて、今週は復興記念館にご案内する。




横網町公園の清澄通り側に建つ復興記念館は、関東大震災の被災者を慰霊する東京都慰霊堂の付帯施設として、慰霊堂が建った翌年の1931(昭和6)年に完成、一般公開された。設計は慰霊堂と同じく伊藤忠太。鉄筋コンクリート造2階建ての、どっしりと重厚な建築である。

復興記念館は東京に未曾有の打撃を与えた関東大震災の記録を集め、将来の天災に対する備えをうながす目的でつくられた。ところが大震災から20年もたたないうちに、今度は第2次世界大戦が勃発。東京大空襲によって、下町一帯はふたたび壊滅的な被害を受けてしまう。そこで戦後、復興記念館には大震災に加え、大空襲関連の資料もあわせて展示されることになったのだった。



2階建ての記念館の1階には、大震災当時の記録写真と絵画、焼け出された日用品などの資料が、2階には海外からの援助資料や、東京大空襲関連の資料、それに戦後発生した地震災害等の写真も展示されている。

演歌よ今夜も有難う:秋田・パブやすらぎ訪問記




演歌歌手が歌を生かした副業を始めようとすれば、カラオケ教室かカラオケ・スナック経営しかない。ときには「昼はカラオケ教室、あるいは昼カラ喫茶、夜はカラオケ・スナック」という形態になったりもする。


プロの歌手がママさんやマスターを務めるのだから、そういうカラオケ・スナックは、飲んでいてすごく楽しい。ショーのチャージなんかなくて、キープ・ボトルを飲むだけのお金でプロの歌を堪能できるのだし、そういう店にはたいてい歌自慢のお客さんが集まってくる。ママやマスターのファン、というひとばかりが常連になるのだから、酒癖のわるい客や、酔って騒々しすぎる団体も来なくなる。演歌歌手のスナックって、実はすごく居心地いい遊び場なのだ。





今回はいつもと趣向をかえて、そんな演歌歌手の経営するカラオケ・スナックの典型をご紹介しよう。この連載の第9回でインタビューした、秋田の歌姫・あずさ愛さんが経営する「パブやすらぎ」だ。

アサヒカメラ:今夜も来夢来人で・長崎県

羽田空港を福岡に飛び立ったのが午前10時30分。福岡空港に12時25分到着、地下鉄で博多駅に出て、特急みどり号で有田まで。そこから松浦鉄道に乗り換えて伊万里まで、さらに乗り換えて終点の松浦にたどり着いたら、午後5時08分になっていた。合計6時間38分。福岡からも長崎からも遠く離れた松浦は、ここだけちがう時間が流れているような、静かな漁師町だ。




モンゴル村で知られる鷹島へのフェリー乗り場近く、九州電力の巨大な火力発電所がそびえる国道脇に、久江ママのスナック来夢来人がぽつんと明かりを灯していた。まわりは真っ暗。こんなところに飲みに来るひとが?と訝りながらドアを押すと、なかはうってかわって大盛況。入って左手にカウンターがあって、右側は料理屋のような小上がり。コタツまで備えてある。焼酎の瓶と料理を並べて、「そろそろ歌うかのぉ、アレ入れてや」とかママさんに声をかけてる男衆も、すごく居心地良さそうだ。







今週のマスト・バイ:昭和スターかるた

プロマイドといえば浅草マルベル堂というのは常識ですが、そのマルベル堂全面協力による『昭和スターかるた 昭和歌謡のスター編』という、楽しいセットが発売されてます。





発売元は、ウエルアップという介護系の企業。ウェブサイトによると「ウエルアップは「疾病予防」「介護予防」をテーマに生活習慣病予防から介護予防分野における、健康関連機器の販売・レンタル・指導者派遣、事業プランニングから運営までをトータルにサポートする企業」なんだそう。


そんな会社がなぜにかるた?かといえば、このかるたで遊ぶと、認知症の予防や進行抑制に役立つそうです!


「昭和スターかるた」と回想法
  認知症の予防や進行抑制のために役立つ回想法ですが、「昭和スターかるた」はその回想法を実践するための道具として最適です。
分かりやすく前向きな、ヒット曲に基ずく読み札を通して、スター写真の絵札を探す・・・。
青春時代のスターの思い出をおしゃべりしながら、ヒット曲を口ずさみながら楽しくかるた遊びを楽しめます。





最近、物忘れが激しくて・・・なんてひそかに悩んでるみなさん、こっそりゲットしてみませんか。アマゾンでも買えます!


公式ウェブサイト:http://karuta.wellup.jp/




2010年1月12日火曜日

いよいよ1月15日オープン! ウェブ古本屋『いい本棚』




前々からお知らせしていた、蔵書売り払い計画「e-hondana」。ついに15日の金曜日にオープンします。長らくお待たせしました!

とりあえず、こちらのアドレスをお訪ねください。


洋書、和書、小説から美術作品集にカタログまで、いろいろ取りそろえています。もちろん、これからどんどん補充予定。リストはちょこちょこ更新して、そのつどツイッターでお知らせするようにいたします。

お支払いはとりあえず宅配便の代引きか銀行振り込みで、将来的にはクレジットカードにも対応予定です。

なにしろ1冊ずつしかないものなので、早い者勝ち! ご愛顧、よろしくお願いいたします。

東京右半分:東京都慰霊堂




相撲と花火の町、両国。駅を出てすぐ北側には隅田川沿いに巨大な国技館と、さらに巨大な江戸東京博物館。あいだに挟まるNTTドコモの高層ビル。ぜんぜん下町っぽくない一角の先に、横網町公園がぽっかりあいた空間をつくっている。

ベンチがあって、遊具があって、鳩がいて。一見ふつうの公園だが、ここはかつて被服廠(ひふくしょう)跡と呼ばれ、関東大震災で3万8000人の死者を出した悲劇の地だった。





いま、横網町公園には「東京都慰霊堂」と「復興記念館」という、ふたつの建物がある。関東大震災と太平洋戦争の東京大空襲の犠牲者、あわせておよそ16万3000体のお骨が、この場所に安置されていることを知るひとは、多くないだろう。

犠牲者のお骨を収めた慰霊堂と、大震災・大空襲の記録を収めた記念館。近代日本の大建築家・伊藤忠太によるふたつの建造物に込められた、悲劇と慰霊と復興への意志を2週にわたって探る旅。

今週は東京都慰霊堂。一般公開されていない慰霊堂内部の、16万人分の遺骨が収められた納骨堂を撮影することができた。




文學界:先端芸術論




 深い森に包まれたサーキットを、奇妙なかたちのゴーカートがのろのろ走っている。
 近づいてきた一台をよく見ると、台車の上には全裸の女性がくくりつけられていた。
 股間には台車に固定された太い電動バイブが突き刺さり、性器をリズミカルに抉っている。口にはボールギャグ(球形の猿ぐつわ)、手は男根型のグリップを握りしめ、それがアクセルとハンドルを兼ねたコントローラーになっているらしい。ふつうならバックミラーがあるカートの両端には、オンボード・ビデオカメラが据えられ、彼女の苦悶(歓喜?)の表情をライブでコントロールルームのモニターに送ってくる。
 緩慢なデッドヒートをコースサイドで見守っていた監督が、突然ワイヤレスマイクに向かって叫んだ――「はい、そこでイケるひとはイっちゃって、潮吹けるひとは吹いちゃってくださ~い!」・・・。
 これ、ある日の夢日記ではなくて、このあいだ関東近県の某サーキットにて行われた、SODクリエイトの1月発売予定作『アクメカート』(仮題)のロケ風景なのだ。

文藝春秋社発行の権威ある純文学誌・『文學界』に、AV(オーディオヴィジュアルじゃなくて、アダルトビデオのほう)の話を書いてしまいました。このブログでも何度か紹介した、S.O.D.の恐るべき企画ものを中心に、いかにいま、エロビデ業界がクリエイティブかを語った小論です。ほかのページは『新春特別対談:カタストロフィ後の文学――世界と対峙する長編小説 高村薫X亀山郁夫』みたいな、すごくシリアスな作品ばっかりなので、読み比べてください!



アサヒ芸能連載:最終回・伍代夏子


今年デビュー25周年を迎えた伍代夏子の、最大のヒットは50万枚を超えた1991(平成3)年の『忍ぶ雨』だろうが、僕が最初に引っかかったのはその少しあとの『恋ざんげ』だった。あの「シュルル、シュルル、シュルル・・」というリフレインが印象的なヒット曲である。

 あれは七月 蝉しぐれ
 瀬音したたる いで湯宿
 ふたり渡った あの橋は
 女と男の 紅い橋




冒頭の4行までは普通の演歌の歌詞なのだが、そのあと唐突に

 ああシュルル シュルル シュルル
 明かりをつけても 暗すぎる
 ああシュルル シュルル シュルル
 淋しさばかりが 群がって
 夜更けのテレビは 蝉しぐれ

そうか、シュルルってのはテレビの放送が終了したあとのサンドストームのことなのかと思ったりするのだが、3番の最後になって

 ああシュルル シュルル シュルル
 帯とく音さえ せつなくて
 夜更けに泣いてる 恋ざんげ

と明かされる。そうか、シュルルとは、帯をとく音だったんだ! ひとり、寝る前に着物を脱ぐときの音で、別れた男を思い出す。そんな深い歌詞を書いたのは、石川さゆりの『天城越え』や大川栄作の『さざんかの宿』でも知られる文芸演歌の巨匠・吉岡治。いま、とにかくわかりやすくて、歌いやすい曲ばかりがヒットチャートを賑わすなかで、こういうディープな歌を聴くと、ほっとする。「カラオケでうたえる歌」じゃなくて、「じっくり聴きたい歌」。伍代夏子は、そういう古風な演歌を愛し、歌いつづける歌手である。

PRINTS21:当世とりかえばや物語




季刊芸術誌『プリンツ21』のコスプレイヤーお宅訪問連載。今回は埼玉県から、「なぎさ」さんと「きらら」さん、かわいらしい若奥様ふたりの登場です。どちらも、すごい迫力! じっくりご覧ください。ちなみに特集は『漫画家デビュー55周年・楳図かずお』! 作品集からお宅訪問、ダンス講座まで、ファン必携の保存版です。







2010年1月6日水曜日

アサヒ芸能連載:田川寿美


このひと、ほんとに演歌歌手?――田川寿美さんをはじめてテレビで観たときは、驚いた。NHKの歌謡番組だったと思うが、豪華なステージに着物姿であらわれて、歌ったのは『島唄』。あの難しい歌を、へんに演歌っぽく味つけせずに、きれいに歌いきったのだが、胸声(ファルセットではない実声)から、ファルセット(頭声)へとナチュラルに移行するその歌いかたは、むしろオペラ歌手のベルカント唱法を思わせる、演歌歌手としてはかなり異質なものだった。でも、いでたちはこれぞ「ザ・演歌」みたいな着物に、アップのヘアスタイル。そのアンバランスな魅力に、すごく興味がわいた。





田川寿美は、いま30代から40代にかかる世代の女性演歌歌手のうちで、もっとも技術的にすぐれたひとりだ。ものすごくテクニカルで、それをさらりとやってみせる。だからいざカラオケで歌おうとして、はじめてその難しさに気がついたりする。

そしてシロウトがカラオケで歌いやすい曲ばかりがヒットする時代にあっては、こんなにうまいのに、セールスが実力についてこない。もっと売れていいはずなのに・・・彼女のステージを観ていると、いつもそう思ってしまう。いま、この時代の演歌界に生きることの幸と不幸を、このひとは両方いっぺんに背負い込んでいるのではないだろうか。


しかし表紙のタイトルもろもろ、興味深いですねー(笑)。

東京右半分:ガレリア・デ・ムエルテ




下町のスペシャリティ・ミュージアムを訪ね歩いて、アラカルトに楽しむツアー。今週は東上野の稲荷町に2007年3月オープンした<ガレリア・デ・ムエルテ>。スペイン語で「死の画廊」という物騒な、そしてメタルやゴス関係の方なら血が騒ぐ、スペシャルなテイストのギャラリーだ。




会うたびに、体に刺青が増えていくデザイナーの友人が、「上野にブラックメタルの画廊ができたんですよー」と教えてくれたのが1年ちょっと前。上野と言っても、美術館のある山の上じゃなくて、稲荷町は上野と浅草のちょうどあいだにある、ほとんどアートの匂いのしないエリアである。

地下鉄銀座線の稲荷町駅を降りて、地上に上がるとそこは仏壇、仏壇、位牌、位牌・・・東京最大の仏具商店街なのだった。こんな場所にギャラリー? でもブラックメタルやデスメタル(ちがい、わかります?)なら、むしろぴったりのロケーションかも!




http://www.chikumashobo.co.jp/blog/new_chikuma_tuzuki/

芸術新潮・創刊60周年記念特大号:わたしが選ぶ日本遺産

・・・というようなハイクラスなタイトルで、文化人の方々がすばらしい日本の風景を、おのおの3つずつ紹介しているなかで、色もの(たぶん)として選ばれた僕は、その使命を果たすべく、「地方のスナック街・秘宝館・ラブホテル」を選んで、その理由を書きました。




歳をとってくるにしたがい、どんなにお金があるよりも、有名であるよりも、血糖値や尿酸値を気にすることなしに、好きなだけ飲んで食べられて、すれっからしのママさんの、シワだらけの目尻にうっすら涙を浮かべさせるほど歌がうまくて、毎日毎晩きっちりドッピュンできる、そんな漢(オトコ)のほうが百倍羨ましいと思うのは、僕だけだろうか。
もう30年間あまり、ほとんど仕事で旅をしてきた。日本の田舎から田舎へと、飽きもせずめぐってきて、いちばん旅情を感じる瞬間。それは夕陽に光る棚田とか、森の奥に見え隠れする朱色の鳥居とかではない。田んぼの中にポツンと、しかし異様なデザインで浮き立つ無国籍ふうのラブホテル建築とか、知らない街のビジネスホテルに宿を取り、飲まなきゃ寝られないけど、どこに行けばわからない・・と思案しながら、ドアを開けてみる勇気もないまま往復する書き割りのようにちゃちなスナック街とか、そういう光景のなかに身を置くときだ。

というわけですが、もちろんほかのページはうっとりするほどストレートに美しい遺産風景が満載なので、品のいい方も楽しめます!




『言葉のペーパーショウ』:トークの記録が載ってます

上質な紙で、デザイン業界では知らぬもののない竹尾・・・高すぎて僕の本には使えたことありませんが。その竹尾が去年4月、丸ビルのホールで2日間にわたって『言葉のペーパーショウ SUPER HEADS'』と題した大講演大会を開催しました。

未曾有の不況が世界を覆ういま、社会や産業は「リセット」されようとしている。そんななかで《紙》という存在は人間にとってどうあるべきか。「製品としての紙」「メディア論でとらえる紙」「感性からとらえる紙」……3つの局面について国内外のとびきりの頭脳が結集し、語りつくした! クリエーターから批評家、印刷のプロから出版社の社長まで、29人のスピーカーの講演を収録した《紙を考える本》。・・・・・・内容紹介より

29人の著名人がスピーカーに立つ中で、なぜか僕も30分間時間を与えられ、お笑いトークをやらせてもらったのですが、それが逐一書き起こされて、立派な記録として出版されてしまいました。10ページもあるので、けっこう読み応えあります。テープ起こしの担当者さま、ご苦労さまでした・・・。

もちろん、ほかの28人の識者諸氏は超・真面目な講演なので、「紙の未来」についてちゃんと勉強したい方々にも、きっと役立つはずです。





注目の展覧会ふたつ:広島と埼玉

もう、こと公立美術館の展覧会に関しては東京が日本のアートの中心じゃなくなって久しいですが、いまちょうど、地方の美術館でおもしろそうな展覧会がふたつ、開催中です。




小村雪岱とその時代:埼玉県立近代美術館

もう10年ぐらい前にアートランダム・クラシックスという、もっと知られるべきなのにB級扱い、または忘れ去られている内外の個展画家たちを選んで、シリーズの作品集にしたことがありました。その中で、個人的にもっとも思い入れが深かった、というか出したかった1冊が『小村雪岱』。初版はたしか1999年でした(そのあと2004年にBNN新社という出版社から再版されてますが、それは編集者の僕がまったく知らないうちに出されちゃったものです!)。第二次大戦前の、日本がいちばん粋だった時代に花ひらいて、いつのまにか忘れられてしまった、繊細なグラフィック・ワークの精華。デザイナー、編集者、そしてイラストレーターの方々、必見です! 2月14日までなので、お早めに。
公式サイト:http://www.momas.jp/3.htm





一人快芸術:広島市現代美術館

もー、これはタイトルで損してますねえ。「Art of Power Born of Pleasure」という英語のサブタイトルは、さらにワケわからないです。が、しかし! 内容は素晴らしい。アウトサイダー系から、梅佳代のようなプロの写真家まで、アートのトレンドとは無関係にひとり、つくることの快さだけを大事にして、とんでもない作品を産み出しつづける19人/組のグループ展です。高知のセルフビルド集合住宅として、あまりに有名な沢田マンション(の大家さんと住人による展示)や、拙著『巡礼』でも紹介させてもらった、横浜寿町のドヤからウルトラロココな帽子アートを発信する宮間英次郎さん、ガムテープ文字の修悦体で知られる佐藤修悦さんなどなど、パワフルな人材が勢ぞろい。なかでもおすすめは、毎年島根の平田で開催されるお祭りの出し物、「平田一式飾」の傑作群。日用品を集めた立体コラージュは、もう完全に現代美術の世界です。これは必見! ほんとに! 2月21日までなので、安い出張パック買ってすぐ行きましょう。
公式サイト:

2010年1月1日金曜日

ブログ読者のみなさまへ、新年のご挨拶



2009年6月から始まった『roadside diaries』、みなさまのご支援のおかげで、毎週更新のペースを死守しつつ、無事に一年を終わることができました。ご愛読、ありがとうございました!

2009年にはアスペクトから『秘宝館』、洋泉社から『現代美術場外乱闘』、『デザイン豚よ木に登れ』、彰国社から『Showa Style』、筑摩書房から『珍世界紀行ヨーロッパ編 文庫版』という、実に節操のないラインナップの新刊を出すことができました。ウェブ・マガジンの連載も廣済堂の『東京スナック魅酒乱』、平凡社の『演歌よ今夜も有難う』、筑摩書房の『東京右半分』と3つも重なり、たいへん忙しく楽しい一年でした。

2010年には『東京スナック魅酒乱』の単行本が2月に、『珍世界紀行アメリカ編』が5月に、どちらも約800ページの分厚い新刊となって発売予定です。同じく2月には恵比寿の東京写真美術館でグループ展、5月には広島現代美術館で個展が開かれます。そして、お待たせしている蔵書売り払いプロジェクト『e-Hondana』も、1月15日にはようやく開店いたします。それぞれ詳細はこのブログで逐一お知らせしますので、昨年同様、ご愛読いただければさいわいです。

世の中、あいかわらず不況、不況の大合唱で、出版業界はいい話ゼロ、スナックも閉店が相次ぐようです。こういう時代だからこそ、「でも、やるんだよ!」(ⓒ根本敬)のスピリットで、ひとの言うこといっさい聞かずに、自分だけに見えてる道を爆走する人間が、いちばんハッピーでいられる気がしてなりません。

たいへんで、たぶんイヤなこともたくさんありそうなこれからの一年間を、みなさまが、そして僕自身も、なんとかポジティブな気持ちで過ごせますように!

都築響一

新春・第1弾のブログは1月6日更新です。