2010年11月17日水曜日

浅川マキ『Long Good-bye』の衝撃

今年の1月に名古屋で亡くなった浅川マキ。「アンダーグラウンドの女王」などという呼称はあまりに安直かもしれませんが、しかし「アングラ」という言葉が磁力を持ち得ていた時代、日本でもっとも暗く輝いていたアーティストであったことはまちがいありません。

生前、浅川マキのCDは10枚組の自選作品集ボックスが出ていたほかは(マストバイ!)、『DARKNESS I~IV』がリリースされていただけでした。一時、アナログ・レコード時代の旧譜が数枚リイッシューされましたが、本人の強い希望ですぐに廃盤となったそうです。

そんなアナログ・ワールドに生きてきた浅川マキの、いま手に入る最高のベスト盤が発売されました。生前、マキを支えたプロデューサーやスタッフたちが再結集して選んだ、2枚組32曲。ディスク1は比較的よく知られた曲が多いですが、2枚目はあまり知られていない曲が多い、かなり凝った選曲。そして32曲中、なんと10曲が初CD化という、2万円の10枚組ボックスを買ったファンですら買わざるを得ない、憎いつくりです・・。先日、関係者のひとりとお話ししたら、「アマゾンの音楽・フォーク部門でいきなり1位になっていて、一同ビックリした」そう。

しかも本作には、歌詞を収めた通常のブックレットのほかに、彼女をずっと撮ってきた田村仁さんによる、未発表写真で構成された32ページの写真集がついてます。しかもお値段は2枚組で3300円という良心価格。これはもう・・・即ポチしかないですね。

一周忌に向けて、来年初頭には白夜書房と実業之日本社から浅川マキ本が出版されるようです。これも楽しみ! 立派な音楽雑誌ではなく、実話誌などの汚い印刷のページに載っていた、彼女の独特な語り口のエッセイは、一見不釣り合いなようでいて、なんだか妙にしっくりなじんでいたのを思い出します。

世の中、こんなに隠れマキ・ファンがいたのかと驚きますが、しかし・・・いま、この時代の浅川マキを、僕らは持つことができるのでしょうか。

<DISC.1>
01. 夜が明けたら(「浅川マキの世界」より)(1970)
02. ちっちゃな時から(「MAKI LIVE」より)(1972、※初CD化)
03. 赤い橋(「MAKI LIVE」より)(1972、※初CD化)
04. 放し飼い(「こぼれる黄金の砂」より)(1987)
05. あなたなしで(「灯ともし頃」より)(1976)
06. ガソリン・アレイ(「MAKI LIVE」より)(1972)
07. それはスポットライトではない(「浅川マキ ライヴ 夜」より)(1978)
08. かもめ(「浅川マキの世界」より)(1970)
09. 裏窓(「裏窓」より)(1973)
10. 淋しさには名前がない(「浅川マキの世界」より)(1970)
11. 少年(「MAKI LIVE」より)(1972、※初CD化)
12. にぎわい(「MAKI LIVE」より)(1972)
13. セント・ジェームス病院(「裏窓」より)(1973)
14. こころ隠して(「CAT NAP」より)(1982)
15. こんな風に過ぎて行くのなら(「こんな風に過ぎて行くのなら」より)(1996)
16. マイ・マン(「マイ・マン」より)(1982)

<DISC.2>
01. TOO MUCH MYSTERY(「寂しい日々」より)(1978、※初CD化)
02. コントロール(「WHO'S KNOCKING ON MY DOOR」より)(1983、※初CD化)
03. めくら花(「浅川マキ�」より)(1971)
04. ふしあわせという名の猫(「浅川マキの世界」より)(1970)
05. ナイロン・カバーリング(「寂しい日々」より)(1978)
06. If I'm on the late side(「流れを渡る」より)(1977、※初CD化)
07. 大砂塵(「Blue Spirit Blues」より)(1972、※初CD化)
08. Blue Spirit Blues(「Blue Spirit Blues」より)(1972、※初CD化)
09. ちょっと長い関係のブルース(「マイ・マン」より)(1982)
10. POSSESSION OBSESSION(「アメリカの夜」より)(1986)
11. アメリカの夜(「アメリカの夜」より)(1986)
12. 朝日樓(朝日のあたる家)(「MAKI LIVE」より)(1972、※初CD化)
13. あの娘がくれたブルース(「Blue Spirit Blues」より)(1972)
14. 暗い日曜日(「寂しい日々」より)(1978、※初CD化)
15. ジンハウス・ブルース(「浅川マキII」より)(1971)
16. INTERLUDE(「闇のなかに置き去りにして」より)(1998)