2010年9月29日水曜日

オレサマ商店建築:新宿・ヘアサロン・アスカ

惜しまれつつ閉館が決まってしまった東京厚生年金会館。その裏手にあたる新宿6丁目界隈は、ちょっと先にある2丁目、ゴールデン街、歌舞伎町と同じ新宿とはとても思えない、静かな住宅街である。

一戸建ての住宅が並ぶなかに店を構える<ヘアサロン・アスカ>は、一見まったくふつうの床屋さん。しかし一歩店内に足を踏み入れてみれば、そこはむしろCDショップ。それも、ものすごくマニアックな店の様相を呈している。フロアに一脚だけ置かれた理髪椅子がなければ、とうていここが床屋だとは理解できないだろう。


店内に飾られているCDはすべてR&Bとヒップホップ。それもほとんどはギャングスタ・ラップと呼ばれる、マチズモ全開で「女とカネと暴力」を歌い上げる、ヒップホップのうちでもハードコアなジャンルの音楽だ。

「もともとはふつうの床屋だったんですよねー」と苦笑するのは、店主の小杉とおるさん(表記要確認!)。別の床屋さんで修行を積んだあと、30年前にアスカを開業。「もともとここは床屋だったのを借りたんだよね、だから名前も、外の看板テントもそのままなの」という、おおらかなスタートだった。それが、いつのまにかこんなふうにマニアックな店に変貌してしまったのは、アスカのすぐ裏手にスタジオを構える湯村輝彦=テリー・ジョンスンさんの、多大なる影響のおかげだった。


「はじめてテリーさんが来たのは25年ぐらい前かな、長髪だったのを、うちで短髪にしたんだよね」と当時を振り返る小杉さんに、湯村さんは同類の匂いを嗅ぎとったらしい。それから散髪のたびに持ってくるレコードやCDを聴かされ、スタジオに遊びに行って作品を見せてもらううちに、すっかり「キング・テリー・ワールド」に小杉さんは魅せられてしまったのだった。