2010年6月9日水曜日

LV式現代美術・その後

先週のブログで、神戸ファッション美術館に現代美術作家・岡本光博が出品した『バッタもん』が、ルイヴィトン・ジャパンの抗議によって展覧会から、会期中にもかかわらず撤収されてしまった事件について書きましたが(せっかく作ったカタログも販売中止になったそう・・)、読者の方から「こんなこともあった!」と報告メールをいただいたので、それもここでお知らせしておきましょう。

メールしてくれたのは宮城県仙台市を拠点に活動する現代美術作家・タノタイガさん。木彫をベースとする作品を制作しているタノタイガさんは、2005〜2006年にかけて『モノグラムラインシリーズ』と題した、一連の作品を制作しています。これはルイヴィトンのうちでも、もっとも知られている「LV]の文字を組み合わせたモノグラムの商品群を、そのままそっくり木彫で作ってしまおうというもの。なんだか須田悦弘の冗談&皮肉版みたいな感じですが、しかし細部へのコダワリは、写真で見るかぎりでもかなりのもの! 言われきゃぜったいわからない、言われたらぜったい吹き出す、楽しい労作でした。

2006年には木彫のLVバッグを肩から提げて、わざわざパリのヴィトンに行き、帰国。日本の税関を通り抜けられるかどうかに挑戦したプロジェクトも試みています。

また同年にはその作品をYahoo!オークションに出品、販売しようとしたところ、Yahoo!から強制削除されてしまったそう。

そして2007年、仙台市にある宮城県美術館でのグループ展『アートみやぎ2007』に、『モノグラムライン』は展示されることになりましたが・・・

会期直前になって、美術館側から作品のLVマークを隠すように指示がありました。なんと、美術館自らLVに「お伺い」を立てたというのです。
その結果、LV側から「訴えることになるかもしれない」との返事が来たことに配慮するというのです。
結果、僕の作品の意図を超え、LVマークに黒丸のシールを貼り、注釈を付けて2ヶ月間展示されました。
(タノタイガさんからのメールより)

この小さな事件は、当時ほとんどメディアで取り上げられることもなく、終わってしまったようです。先週の神戸ファッション美術館のケースは、ヴィトン側から抗議が来て撤収したというものでしたが、宮城美術館のほうは自分から「お伺い」を立てたというのですから、よけい情けないですねえ。

先週も書いたように、ルイヴィトンはリチャード・プリンスなど有名現代美術作家とのコラボ商品をたくさん発売しています。ご承知のようにリチャード・プリンスはマルボロ・マンなど、現代社会のアイコンと化した商業的イメージを(無断で)コラージュすることで、刺激的な作品をつくってきた作家です。僕も彼の作品は好きですが、しかし他社のアイコンを勝手に作品にするアーティストはOKで、自社のアイコンを作品に使われるのはNGって、ちょっとワガママすぎません? それとも有名アーティストはOKで、無名だからNGなんでしょうか。

タノタイガさんの『モノグラムライン』は、彼のサイトでじっくり鑑賞できます。ぜひ、ご覧ください!
http://www.taigart.com/works/archives/cat_056mono.htm

そういえば去年9月のブログで、メキシコの「ヴィトンハウス」をご紹介しましたが、これなんかもヴィトンさまは破壊命令とか出したんでしょうか。