2009年12月24日木曜日

東京右半分:浅草アミューズ・ミュージアム


東京の美術館といえばまず上野だが(だったが?)、あんなに大きくて有名じゃない、でもピリリと鋭いミュージアムが、右半分にはたくさん隠れている。フルコースじゃなくて、単品料理をハシゴしながら味わうミュージアム・ホッピング。第1回は浅草にオープンしたばかりのアミューズ・ミュージアムを取り上げました。

浅草の中心である浅草寺。重要文化財になっている二天門のすぐ脇に、『アミューズミュージアム』がオープンしたのは今年11月のこと。名前が示すとおり、運営母体になっているのは、あのアミューズ。サザンオールスターズからポルノグラフィティからパフュームまで抱える、一大音楽プロダクションである。
築44年、もともと結婚式会場として建てられたものが、転々と店子がかわったあげく、デベロッパーに買い取られて再開発されるはずが、金融ショックで廃墟化、3年以上シャッターgままだったのを、アミューズが買い取ったのが今年3月のこと。ずっと東京の左半分から流行を発信しながら、「浅草には芸能の神様がいるんだから!」という、アミューズの創立者である最高顧問・大里洋吉さんの独断だったという。

アミューズ・ミュージアムの展示の核となっているのは、去年出版した『BORO―つぎ、はぎ、いかす。青森のぼろ布文化』(2008年、アスペクト刊)で紹介した、青森在住の在野研究者・田中忠三郎さんの貴重なコレクション。まさか浅草で、あの「ぼろ」が展示されることになるとは、想像もしなかった。
エンターテイメント企業が運営しているだけあって、アミューズ・ミュージアムは、いわゆる「美術館」とはずいぶんテイストがちがう。ショップあり、はかま姿で織物の実演をしてくれる「織り姫」もいれば、ショップもカフェも、おまけにミュージアムが閉館する夕方から、翌朝まで営業するという、秘密めいたバーまである。展示されている「ぼろ」も、ひとつずつ触って、その存在感を自分の手で確かめることができる

ケレン味に満ちた、アカデミックな研究家だったらドン引きしかねない、そんな展示空間。でも、アカデミックなミュージアムがいままで完全に無視してきた、青森の極貧の農民たちが生んだ真のストリート・アートに、救いの手をさしのべたのもまた、アミューズのようなエンターテイメント企業だけなのだ。




アミューズ・ミュージアム公式サイト: