2009年11月4日水曜日

今週のマスト・バイ:八代亜紀のCD2枚

先週、八代亜紀のことをちょろっと書いたら、意外に反響があったので、久しぶりに聴いてみようと思った方のために、CDを2枚紹介します。

もちろん過去のヒットを集めたベスト盤や、1970年代から80年代の活動を網羅したボックスなども出ているのですが、ここでご紹介したいのは、まずこちら。『VOICE』は2005年に、歌手生活35周年を記念して作られた、6曲入りのミニ・アルバム。荒木一郎の『空に星があるように』や、下田逸郎の『魅惑』など、渋い選曲が光りますが、ベストトラックは『この素晴らしき世界』。これ、実はルイ・アームストロングの『ホワット・ア・ワンダフル・ワールド』を、日本語で歌ったヴァージョンなんですね。

演歌歌手が洋楽のスタンダードに挑戦するのはよくあるけれど、けっこう痛い結果に終わってることが多いでしょ。しかし八代さんのは、古くは美空ひばり、ちあきなおみの一連のジャズ・ナンバーや、青江美奈がニューヨークで録音した『シャドウ・オブ・ラブ』にも通じる、完全に八代節と化したジャジーな歌唱で、サッチモにもぜんぜん負けてません。もともと歌謡曲歌手ではなく、15の歳に年齢をごまかして熊本のクラブで歌いはじめたという経歴だけに、貫禄はすごいものがあります。



そうしてもう一枚。ジュリー・ロンドンに憧れてクラブ・シンガーになった八代亜紀の魅力が爆発しているのが、『八代亜紀と素敵な紳士の音楽会〜LIVE IN QUEST』。いまは亡き原宿のクエストホールで、1997年9月26日に開かれたワンナイト・コンサートのライブ録音。バックバンドからすごくて、なんたってクラリネットに北村英治、ドラムスがジョージ川口、ピアノ世良譲、ベース水橋孝という、日本の戦後ジャズ史を代表する面々です。

で、八代さんは気持ちよさそうに『ホワット・ア・リトル・ムーンライト・キャン・ドウ』や、『ユード・ビ・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ』、『クライ・ミー・ア・リヴァー』など定番の名曲を、日本語と英語をまじえて(!)気持ちよさそうに歌ってるのですが、そういうスタンダードと交互に歌われるのが、『雨の慕情』、『なみだ恋』、『ほんね』、そして必殺の『舟唄』まで、自身の大ヒット・ナンバー。北村英治のクラリネットから静かにスタートする、ジャジーな『舟唄』なんて、もう鳥肌が立ちます! 日本語と英語を交える『荒城の月』なんて渋い選曲も入ってるので、これはもう即買いしかないでしょう。




実はこのCD,もともとマニアが探し求めるレア盤だったのですが、このほどコロンビアからCD−R盤で再発。CD−R盤とはつまりオンデマンドのことで、注文があるとレコード会社がCD−Rに焼くという、インディーズみたいなシステム(情けない!)。それに、いかにもインクジェットみたいなしょぼい盤面印刷、さらにしょぼい、オリジナルからスキャンされたライナーノーツがついて、なんか哀しくなりますが、でも高値でLP買うよりいいでしょう。深夜、こういうのを聴いてると、ひとりで水割り飲みたくなりますよー!