2009年9月9日水曜日

奇跡の出版プロジェクト:山中学『羯諦』

日本ではほとんど名前を知られていないのですが、たぶん、いま活動する日本人フォトグラファーのうちで、もっともハードコアな写真を撮り続ける作家に、山中学がいます。

1959年尼崎生まれ、23歳で上京して広告写真家を目指しますが、ほどなくみずからの作品世界にのめりこんでいきます。

阿羅漢

1989年、東京で撮影した乞食のポートレート『阿羅漢』で、作家デビュー。以来、動物の死骸が朽ち果てていくさまを記録した『不浄観』、全裸の老婆ばかりを集めた『羯諦』、東南アジアの貧しい子供を撮った『童子』、畸形の男女をはだかにした『浄土』、そして胎児の静物写真『無空 茫々然』まで、25年間にわたる作品群は、どのようなトレンドとも、安直なポリティカル・コレクトネスとも、まったく相容れないために、これまで日本ではほとんど紹介されませんでした。

不浄観

9月10日、POT出版から発売される『羯諦』(ギャーテイ)は、山中学の6シリーズ、108点の作品を掲載した、初のレトロスペクティヴというべき作品集。6000円という定価に躊躇するひともいるかもしれませんが、これは出版されたというだけで驚異的なプロジェクトです。撮った山中さんもすごいけど、出したほうもすごい! 

無空 茫々然

作家本人と、出版社、そして彼の作品をフォローしつづけてきた書店『タコシェ』。3者の情熱の結合から生まれおちた、本のかたちをした奇跡を、ぜひ手にとってご覧ください。

山中学 公式ウェブサイト http://www.ask.ne.jp/~yamanaka/index-j.html
タコシェによる紹介ページ http://tacoche.com/?p=1240