2009年6月25日木曜日

$今週のベスト・バイ:『裸で銅像になりきって街角羞恥露出』

お上の規制にもかかわらず、いや、むしろ規制があるおかげなのか、クリエイティブな観点から見れば、世界のトップを独走しつづける日本のAV業界。アニメと並んで、世界でもっとも愛される現代日本文化なんですから、外務省や文化庁もバックアップしてほしいもんです。
 なかでも業界最大手のSOD(ソフト・オン・デマンド)は、その名を一躍高めた『全裸』シリーズで「抜けないAV」という革命的なコンセプトを提出。エロ・マニアのみならず、現代美術愛好家をも震撼させたわけですが(新刊『現代美術場外乱闘』に詳述してあるので、ご覧あれ!)、去年の夏から「アート・シリーズ」とでも呼びたい一連の作品群が、リリースされているのをご存じでしょうか。
 有名女優が出ているわけではないので、なかなかメディアで紹介される機会がないのですが、まず去年の7月に出たのが『人間家具』。女の子たちがテーブル、椅子、花瓶に、果てはシャンデリアにまでさせられてしまうという、大変な作品です。ウェブサイトの説明を読んでみると・・・

家中の家具が『人間』だったら!?新種の特殊遺伝子が発見された人間は、捕獲、調教を経て『家具』として売られる!? そんな世界の一般家庭の生活をご覧下さい! 女性器に花や電球が突き刺さる「花瓶」や「電気スタンド」、食べ残しを処分させられる「テーブル」、あげくにトイレの「便器」で人間の尿や精液の処理をさせられる! もう完璧に『物』として扱われる女たち! わずかに残された人としての意識が、切ない表情や苦しみを微かにあらわす!

というわけですが、画像を見てみれば、これはもうまんまアレン・ジョーンズでしょう! 1960年代のポップアート・ムーヴメントの寵児だったアレン・ジョーンズは、もちろんSM的な女性のポートレートや、家具化した女体の立体作品で世界的に有名なわけです(写真はロンドン・テイトギャラリー収蔵)。
 SODの『人間家具』は、ジョーンズが”彫刻”というかたちでしか表現できなかったアイデアを、生身の、若くてきれいな女の子たちで実現させてしまった、現在進行形のポップアートと言えないこともありません(言い過ぎ?)。


『人間家具』に続いてリリースされたのが、『全裸美術館~世界で最も見たくなる美しき全裸』。今度はポップアートから一挙に美術史をさかのぼり、印象派からルネッサンスまで!、名画中の名画を、これまた生身の人間で再現。しかも「この名画の場面では、実際にどんなことが行われているのか?」までも教えてくれる、いたれりつくせりの内容。なんたってマネの『草上の昼食』から、ボッディチェッリの『ヴィーナスの誕生』まで再現しちゃうんだから、すごいですねえ。登場する女の子たちが、けっこう名画に似てるところも、泣かせます。『ヴィーナスの誕生』が誕生したのは1485年。それから500年以上たって、絵が本物になったんですねー。ちなみに内容説明は、このとおり・・・

名画の世界を高画質カメラにより実写で完全再現。名画の世界を多角的に見ることで最も美しく卑猥な全裸が表出する。そよ風にそよぐ若草のような陰毛や呼吸で微かに揺れる巨乳、細かな収縮を繰り返すアナル等、ここでしか見ることが出来ない全く新しい全裸映像をご堪能下さい。さらに名画に隠されたエロきエピソードも完全再現。名画と全裸とぶっかけとSEXのコラボレーションは必見!!









 しかし「名画と全裸とぶっかけとSEXのコラボレーション」って・・・・。そして今月、アート・シリーズの第3弾、『裸で銅像になりきって街角羞恥露出』が、満を持して(?)登場しました。これがどんな内容かといえば・・・

女の子が裸で銅像になりきって羞恥露出!本人は一般人だと思っているエキストラでいっぱいの公園でHなドッキリ企画を敢行!人目を盗んで少しずつポーズを変化させてY字バランス、感じるのをガマンしてハメながら軟体エロポーズ!小便少女になりきって公開オシッコ&大量潮吹き!笑顔の胸像…なのに台座の下では激しい手マン・クンニ、ハメられながら大注目!プルプル震える体、勃起する乳首、引きつる笑顔…どこまで羞恥心の限界に耐えられるのか!?
裸体にペイントを施し、彫刻作品に扮して公共空間にあらわれる・・・これって、現代美術ではパフォーマンス・アートで、よく見ません? 彫刻に扮するといえば、これはもうギルバート&ジョージの初期作品『シンギング・スカルプチャー』そのままだし。しかもこっちはただ突っ立ってるだけじゃなくて(ギルバート&ジョージは歌ったりしてましたが、着衣だし)、本番セックスまでしちゃうんだから。ただ脱いでみたぐらいで”アート”だとか言ってる、そのへんのパフォーマンス・アーティストにも見習ってほしいもんです。

 こういうのをエロビデと笑い捨ててしまうのは簡単ですが、ルネッサンスから現代にいたるまで、人類がいかに”芸術”という名目のもとに、エロを表現し、堪能してきたかを、このシリーズは図らずも露呈しているんじゃないかと思うわけです。
 宗教画のくびきから解放され、”芸術”の名のもとに思う存分、裸体を描く自由を得たルネッサンスの画家たち。”アート”だから、どんなに過激な作品でも美術館に飾ってもらえて、巨額の報酬も得られるようになった現代美術作家。そして、小さいころに教科書で古典の裸体画を見て「これって、なんかやらしい!」と心の中で感じつつも、やらしいと感じる自分がやらしいんだと思いこみ、思いこまされることを繰りかえしながら、”知的な美術愛好家”になっていった自分。
 もしかしたらSODって、いまいちばん挑発的な現代美術作家であり、批評者なのかもしれないですね!